<背景>
我が国が、平成26年1月に批准した障害者の権利に関する条約(国際連合)では、障害に基づくあらゆる差別を禁止しています。ここで言う「差別」には、障害者であることを理由とする直接的な差別だけでなく、「合理的配慮の否定」も含まれるということが、明確に示されています。またこの条件は、障害者が他の人と平等に、住みたい場所に住み、受けたい教育を受け、地域社会におけるサービスを利用できるよう、障害者の自立した生活と地域社会への包容について定めています。
障害者基本法の改正(2011年8月)や中教審の「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(2012年7月)にも見られるとおり、発達障害などの特別な教育的ニーズを持つ児童生徒への教育実践力の力量形成については、特別支援学校の教員を目指す学生ばかりではなく、通常学級の教員を目指す学生、特別支援学校教諭免許状を持たない、あるいは特別支援学校等に勤務経験のない教員に対しても強く求められています。
北海道は広大な地域にへき地・小規模学校が多数存在する。とりわけ遠隔地の小規模校においては、学校の統廃合などにより孤立が進むとともに、貧困や教育困難を背景とする多様な教育的ニーズのある子どもへの対応が求められており、入学から卒業まではもちろんのこと、就労後の支援までを含めた総合的な「地域における発達支援」を見通した教育ができる人材の育成が喫緊の課題となっています。
発達障害に関する専門機関による支援については、遠距離であることから移動や情報のやりとりにおける双方の負担が大きく、対応が遅くなるなどの問題がある。一方、地域の特別支援教育の柱となるべき特別支援学級担当教員についてみると、これまでの調査から、北海道東部のへき地・小規模校の多い地域では、特別支援教育教員免許取得率が約2割と低く(札幌近郊の石狩市庁では約8割)、また教員経験5年未満の教員が担当する特別支援学級が約7割を占めるなど、地域格差とともに、その教育力の低さが大きな課題となっています。
こうした北海道における、へき地校や遠隔地の学校に対する課題は、離島地域やへき地校を抱える他の自治体にも共通する課題であり、当該事業での取組を通じて開発の成果を全国に還元・展開していくことが急務と考えられます。
一人ひとりの能力と価値が発揮される地域、社会こそ、インクルーシブな社会の構築へつながるという「インクルーシブ教育システム構築モデル地域(スクールクラスター)」の考えも取り入れ、それぞれの地域の実情・実態に即して、通常学校がその中心となっていく地域学校教育のあり方を、実施機関の機能を生かしつつ、協働の取り組みで構築していくことにより、より多くの教職員の専門性向上がはかれるのではないかと考えられます。
北海道の地域特性を背景に、発達障害そのものの理解とともに、地域特性を含めた環境 要因の理解の上で、これらに対応した指導技能を獲得し情報提供をするシステムを構築することが急務となっています。
さらに今後のインクルーシブ教育の進展も考慮に入れ、発達障害などの多様な障害のある児童生徒に対応できるような指導方法とその配慮事項を情報として蓄積することも求められることから本事業を実施するものです。