調査報告:知的障害特別支援学校寄宿舎における余暇支援
研究概要
すべての人々にとって、「余暇」はそのQOL(生活の質)の維持と向上のために必要なものである。特に障害のある人々にとっては、将来の安定した社会的生活・適応のために必要ならば早期からの支援が望ましい。特別支援教育に関連する文献および研究からは、余暇支援の重要性は十分に認識されていると伺えるが、その支援実態はいまだ明確にされているとは言えない。本研究では、障害のある人々への余暇支援の実態を明らかにし、今後の課題点について考察していくことの一環として、全国の知的障害特別支援学校寄宿舎に対しアンケート調査を行った。調査項目は大きく分けて、「寄宿舎で過ごす児童生徒の余暇の現状」、「寄宿舎における余暇支援のニーズ」、「余暇に関する学校、家庭との連携」の3点である。
アンケート回収率
全調査対象(121 カ所)のうち回収率は82.64%(100 カ所)であった。(数値は小数第3 位で四捨五入、以下同様)また、小学部を併置している特別支援学校について、調査対象のうち85.87%(79 カ所)が、高等部のみ設置している特別支援学校について、調査対象のうち72.41%(21 カ所)が回答した。
また、回答者の男女比について、男性が35.72%(329 名)、女性が63.19%(582 名)、無回答が1.09%(10名)であった。回答者の年齢と勤務年数については、平均年齢は42.47 歳(有効回答率97.94%)であり、平均勤務年数は15.17 年(有効回答率97.72%)であった。
謝辞
今回の研究調査にあたって、貴重な時間を割いて協力してくださった、全国の特別支援学校寄宿舎の職員の方々に心より感謝いたします。
調査結果1:普段の自由時間の過ごし方
図1−1 普段の自由時間の過ごし方
調査結果1a:小学部を併置している寄宿舎
図1−2a 児童生徒が自由時間にしている活動(小学部を併置している寄宿舎)
調査結果1b:高等部のみを設置している寄宿舎
図1−2b 児童生徒が自由時間にしている活動(高等部のみを設置している寄宿舎)
調査結果2:職員が自由時間に提供する活動
図2−1 自由時間に職員が提供する活動
調査結果2a:小学部を併置している寄宿舎
図2−2a 自由時間に職員が提供する活動(小学部を併置している寄宿舎)
調査結果2b:高等部のみ設置している寄宿舎
図2−2b 自由時間に職員が提供する活動(高等部のみ設置している寄宿舎)
調査結果3−1:自由時間に提供する活動の目的
本調査の対象者全921 名のうち、提供する活動に目的があると回答したのは86.21%%(794 名)であった。また、提供する活動に目的はないと回答したのは1.19%(11 名)、無回答が3.37%(31 名)であった。自由時間に提供する活動の目的について、10%以上のものを示した(図3-1)。提供目的は多い順に、人との交流/親睦/コミュニケーション(30.10%)、興味関心の幅を広げる/遊びの紹介(26.32%)、活動を楽しむ(15.24%)、運動不足解消/体力作り(14.23%)、社会性・協調性を身につける(9.07%)、ルール・マナーを身につける(8.69%)、自由時間の充実(8.06%)、気分転換/ストレス発散(7.31%)、卒後の余暇につなげる(6.80%)、社会体験/生活スキルを身につける(4.91%)、子どもの実態把握/指導員との関係作り(4.66%)、心の安定/リラックス(4.16%)、自主性を育む(3.78%)、学習へのつながり(3.40%)。
図3−1 自由時間に提供する活動の目的
調査結果3−1a:小学部を併置している寄宿舎
図3−1a 自由時間に提供する活動の目的(小学部を併置している寄宿舎)
調査結果3-1b:高等部のみを設置している寄宿舎
図3−1b 自由時間に提供する活動の目的(高等部のみを設置している寄宿舎)
調査結果3−2:自由時間に活動を提供しない理由
本調査の対象者921 名のうち、自由時間に活動を提供しないと回答したのは85 名(9.23%)であった。自由時間に活動を提供しない理由として、10%以上のものを示した。提供しない理由は多い順に、子どもが好きに過ごしている、職員不足(29.41%)、時間や日課の関係(24.71%)、障害の多様化・重度化(8.24%)、ゆっくり過ごしてほしい、自主性の尊重(5.88%)。
図3−2 自由時間に活動を提供しない理由
調査結果3-2a:小学部を併置している寄宿舎
図3−2a 自由時間に活動を提供しない理由(小学部を併置している寄宿舎)
調査結果3-2b:高等部のみ設置している寄宿舎
(図3-2b)提供しない理由は多い順に、職員不足、子どもが好きに過ごしている(34.62%)、時間や日課の関係上(19.23%)、障害の多様化・重度の子が多い(7.69%)、強引に協調性を育てるべきでない、自己認知、自己解決を目指すため(3.85%)。
図3−2b 自由時間に活動を提供しない理由(高等部のみ設置している寄宿舎)
調査結果4:子どもが寄宿舎で余暇を過ごすニーズはあるか
本調査の対象者全921 名のうち、必要性はあると回答したのは97.83%(901 名)であった。また、必要性はないと回答したのは0.11%(1 名)、無回答が2.06%(19 名)であった。必要性があるという回答について、3%以上であった理由の項目と割合を示した(図4-1)。理由の多い順に、幅を広げる・経験が出来る(15.09%)、卒後の生活を考えて(12.32%)、コミュニケーション・交流(12.1%)、気持ちの安定・リラックス(10.99%)、ストレス解消・リフレッシュ(10.1%)心身の充実・充実した生活(8.1%)、社会性・協調性を身につけられる(5.89%)、一人でも何かをして過ごせるように(5.66%)、楽しみ・励みになってほしい・メリハリ(4.44%)、人間として当然あるもの(4.00%)、自主性の育成(3.55%)、時間の使い方の理解(3.11%)、ルール・マナーを身につけられる(3.00%)。
図4−1 寄宿舎で余暇を過ごす必要性がある理由
調査結果4a:小学部を併置している寄宿舎
必要性があるという回答について、3%以上であった理由の項目と割合を示した(図4-2a)。理由の多い順に、幅を広げる・経験ができる(16.83%)、卒後の生活を考えると(12.37%)、気持ちの安定・心を落ち着ける(11.08%)、コミュニケーション・交流(10.22%)、心身の充実・充実した生活(8.35%)、ストレス解消・リフレッシュ(7.19%)、社会性・協調性(6.91%)、一人でも何かをして過ごせるよう(6.04%)、楽しみや励みになってほしい(4.89%)、人間として当然あるもの(4.32%)。また、該当数が3%以下の項目は次のとおりである。自由に使える時間(1.87%)、働く意欲(1.29%)、自立のため(1.01%)、自分自身の向上(0.58%)、自己実現の場・自信になる(0.43%)、ルール・マナー(0.36%)何らかの働きかけが必要・キャリア教育・社会参加のため(0.14%)。
図4−2a 寄宿舎で余暇を過ごす必要性がある理由(小学部を併置している寄宿舎)
調査結果4b:高等部のみ設置している寄宿舎
図4−2b 寄宿舎で余暇を過ごす必要性がある理由(高等部のみ設置している寄宿舎)
調査結果5:将来の生活を想定した取り組み
図5−1 卒業後の生活を想定した取り組み
調査結果5a:小学部を併置している寄宿舎
図5−2a 卒業後の生活を想定した取り組み(小学部を併置している寄宿舎)
調査結果5b:高等部のみ設置している寄宿舎
図5−2b 卒業後の生活を想定した取り組み(高等部のみ設置している寄宿舎)
調査結果6:子どもの余暇について学校と情報交換しているか
児童生徒の余暇についての学校との情報交換・連携について、情報交換・連携共にしている」が108名(11.73%)、「情報交換のみしている」が576 名(62.54%)、「情報交換・連携共にしていない」が103名(11.78%)、無回答が134 名(14.55%)であった(図6-1)。
図6−1 学校との余暇についての情報交換・連携の有無
調査結果6a:小学部を併置している寄宿舎
図6-2a 学校との余暇についての情報交換・連携の有無(小学部を併置している寄宿舎)
調査結果6b:高等部のみ設置している寄宿舎
図6-2b 学校との余暇についての情報交換・連携の有無(高等部のみ設置している寄宿舎)
調査結果7:保護者からの家庭での余暇についての情報を得ているか
図7−1 家庭での余暇について保護者から情報を得ているか
調査結果7a:小学部を併置している寄宿舎
図7-2a 家庭での余暇について保護者から情報を得ているか(小学部を併置している寄宿舎)
調査結果7b:高等部のみ設置している寄宿舎
ていない」が1 名(0.49%)、無回答が6 名(2.87%)であった(図7-2b)。情報を得る手段として、連絡帳の使用、子どもの帰舍帰省時の引き継ぎ、懇談、家庭訪問、入舎時の聞き取り、子ども本人からの聞き取りがあった。
図7-2b 家庭での余暇について保護者から情報を得ているか(高等部のみ設置している寄宿舎)
調査結果8:保護者に寄宿舎での余暇について伝えているか
図8−1 寄宿舎での子どもの余暇を家庭に伝えているか
調査結果8a:小学部を併置している寄宿舎
図8−2a 寄宿舎での子どもの余暇を家庭に伝えているか(小学部を併置している寄宿舎)
調査結果8b:高等部のみ設置している寄宿舎
図8−2b 寄宿舎での子どもの余暇を家庭に伝えているか(高等部のみ設置している寄宿舎)